長浜御堂前町 日吉神社のエノキ

風まかせ

2018年09月01日 19:01



 
 秋、エノキには花のあとに赤褐色の小さな実が成る。熟した実は甘く、昔は食用にされた。エノキは「よのみ」とも呼ばれるが、「エノキの実」が訛ったものだろう。
 長浜の街なかを流れる米川沿いに、日吉神社の小さな社があり、そばにエノキの大木がある。日吉神社は、文化7年に長浜町の鬼門除けとして坂本の日吉大社から勧請されたものである。200年あまり前のことだ。
 鬼門は、北東、つまり丑と寅の方位を指し、鬼が出入りする忌むべき方角とされた。その反対の方角が申であることから、猿を鬼門避けとして祀るところも多い。山王権現とも呼ばれる日吉大社は、猿を神の使いとして崇拝する。
 御堂前町には100年前の大祭の記録が残っており、そこに「よのみ」のことが記されているという。樹齢は100年をゆうに上回る。
 エノキの字である榎は、木偏に夏と書く。江戸時代、街道筋の一里塚にこの樹がよく植えられた。榎は、夏に心地よい木陰をつくることから作られた字だという。
 長浜に住むお年寄りたちは、長浜市の榎木町を「よのき」と呼ぶことが多い。湖北町田中にあるエノキの大木は「えんね」と呼ばれている。
「よのみ」「よのき」「えんね」。いずれも土地の人たちに愛されてきた名である。